闇深きそのカラクリを解き、素晴らしき自己実現を背面跳びで笑え。

2009/06/06


はじめ、そこは見渡す限り暗闇だった。 

自分がどの方向を向いて進んでいるのかすら解らない。 

出口はおろか、入口さえも見失ってしまうほど、そこは、ただあまりにも真っ暗な闇だった。 



僕に与えられた猶予は三か月余り。 

もちろん断ることもできたし、誤魔化して済ませることも容易だった。 

それなら何故、僕はこうも厄介な暗闇を手さぐりで、なおもフラフラと彷徨っているのか? 



答えは簡単だ。 



自分の人生をもう少し味わい深いものにしてみたかった。 



知識は素晴らしい財産だと人は言う。 

ならば、その財産をもっと具現化してみたいと思ったのだ。 


しかし、だ。 

想像以上に、その闇は深い。 

着地点は既に決まっているはずなのに、その過程は思いのほか複雑だ。 


フラスコの中を泳ぐ、化学反応のカラクリ。 

無限の組み合わせを、僕はくりかえす。 

くりかえす・・・。 

くりかえす・・・・・。 



その処方箋は、睡眠時間と反比例しながら、膨大に増えていく。 

いたずらに、ただ増えていく。 



その昔、パブロ・ピカソは云った。 

「芸術とは、妥協の産物なのです」 

つまり、どこかで妥協しないと、その作品は決して完成しない。 
どれほどの傑作でも、それを手掛けた人間は、どこかで筆を置く決断に迫られていたのだ。 

しかし、これは芸術ではない。 

【契約】だ。 

妥協しては終われない。 

美容師としての誇りなんてものは、はじめから持ち合わせてはいないが、いくつになっても憶病なんだなぁ。きっと。 


そして例の如く、今夜もアスファルトの上で唱える。 

スバラシイ。スバラシイ。スバラシイ。 



★★★★★★★★★★


某企業に、シャンプーとトリートメントの製造プロデュースを依頼されてから、既に一ヶ月が過ぎた。 

これ以上のものは無い!と胸を張ったところで、決められた製造コストの上限をはるかに超えてしまう。 

そして、やり直すことに慣れてしまうと、今度はいつの間にか出来上がってしまった、自分設定のハードルがやけに高く感じてしまうのだ。 

どうせ、やり直すならこれくらいは飛ばなきゃ駄目だ。 

つまり、そんなふうにして暗闇の中をハードルはさらに上がっていく。 


今夜も、様々なタンパク質や活性剤は、その姿を巧みに変えながら、優雅にフラスコの中を泳ぐ。 


そんな世界を覗き見ながら、アルコールを口に含む。 
美容業に携わる者としては、あり余る光栄だ。 



これ、やりきったらご褒美にハミングバードを買おう(苦笑) 

それに、新しい自転車も。

 

Share on Facebook
Share on Twitter
Please reload

  • Facebook Social Icon
  • Twitter Social Icon
  • Instagram Social Icon
記事一覧

2014/05/20

2008/04/10

2005/11/15

Please reload