Remember 【THE " BGM " ROCK SHOW】


その日、僕に与えられた使命は、血液が付着したまま不要になった古着をたくさん集める事から始まった。

便利な世の中だ。

簡略化され、拡散されていく僕の要求は、SNSに乗って瞬く間に世界中にいる別の誰かと共有されていく。

やがて、そうして集められた大量の血液を、僕は休む間もなく丁寧に抽出していった。

そんな特殊な作業の一連を、僕はとても楽しんでいる。

用意した器が抽出された血液で満たされていく様子に、とても大きな喜びを感じていた。

次に、抽出した大量の血液に熱を与え過ぎないよう、細心の注意を払いながら撹拌する。

混ざりながらそれは、やがて深い濃度の中でトロリとしたジャムのようになった。

あらかじめ用意した豆電球の電極にそれを塗る。

薄暗い研究室の中で、それは些細な疑いもなく点った。

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2015年11月30日 月曜日。快晴。

午前10時過ぎ。前日からやり残した作業を終え、翌朝の7時をいくらか過ぎたところで布団に入ったことは覚えている。

つまり3時間程度は眠れていたようだ。その間にどうやら、僕は血液で発電する研究を完成させたようだった。

フロイトに傾倒していた10代後半の頃は、夢日記を付けて自分の深層心理に触れることを日課にしていたが、いつのまにか、そんなこともしなくなった。

歳を重ねるごとに、夢を覚えていられなくなったせいだろう。

奇妙な夢の出来事をぼんやりと追認しながら布団を出て、シャワーを浴び、クローゼットにかけた新品のTシャツに頭をくぐらせる。

【THE BGM ROCK SHOW】

そんなふうにプリントされた真新しいTシャツは、なんだか体に張り付いて落ち着かない。

その着心地の悪さも、数時間後に起こるそれを、さらに強く実感させる材料になった。

思い返せば、まるで無計画な話だった。

敬愛するYellow Studsの野村太一を自店の客席に迎え、少し浮足立っていたのかもしれない。

彼の髪にハサミを入れながら、なんとなくお互いの話をしているうちに、僕はこの店が今年で10周年を迎えることに気付き、その場の思い付きで提案してしまったのだ。

「あぁ、いいっすよ。俺らで良ければお祝いさせてください」そんな軽いノリの返事だった。粋な人だよね、本当に。

だからこそ余計に、お客さんもミュージシャンも本当に楽しめるようなイベントにしようと思った。

そのために何ができるか?

採算はあとで考えよう。とにかくまずは僕が楽しもう。

【やりたいことリスト】に箇条書きにされていく候補が増えるにつれ、それと反比例しながら準備期間は減っていく。

「月末の平日だよ?色々と詰め込んだところでお客さん来なかったらどうすんのさ?」

僕の右斜め上のほうから、客観視する別の僕が容赦なくダメ出しを入れる。

わかってる。わかってる。

まずは出来ることの精度を上げよう。「やりたいこと」と「出来ること」に少しだけ距離をつけよう。

予告動画、フライヤー、ポスター、特設サイト、Tシャツ・・・・。

無駄になってもいい。とことん楽しもう。

11月30日のその日を迎えるまで、そんなふうにして僕の日常は、ジャグブランキンの通常業務と、そのことばかりになっていった。

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出演ミュージシャンは、迷うことなく決まった。

通常のブッキングライブではあり得ないような、とにかく贅沢などんぶりの、さらにトッピング全部乗せ。

誰かがそんな形容をしてくれた。

イベントに足を運んでくれるお客さんの中には、ライブハウスなど行ったこともないようなジャグブランキンのお客さんも多かった。

だからこそいろんなジャンルの音楽を見せたかった。

イエスタのおかげで、いろんなミュージシャン達と知り合えたことも本当にありがたかった。

Novem、HONEBONE、DA.RASS BATTERY、たいへんにんげん、赤い月、Yellow Studs・・・。

贅沢などんぶりの、さらにトッピング全部乗せ。

うん、本当にそうだ。

箸をつける前から、食べ終わってしまうことを予感して寂しくなるような、そんなラインナップだった。

そして、2015年11月30日、月曜日。17時30分。

いよいよ【THE "BGM" ROCK SHOW】が開演した。

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カタカタとキーボードを叩きながら、あまりにも長くなってしまった文章を途中でディレイトする。

ライブレポみたいなものはやめておこう。僕が目撃したあの時間を文章にしたところで、きっと伝わらない。

ただ、あの瞬間。

アンコールの拍手と咆哮の中で鳴らされた【バード】のイントロ。

それにオーディエンスが激しく反応し、揺れ、跳ね、やがて大きなうねりと化けたモッシュ。

その中をかき分けながら、ステージから降りてきた太一くんのシャウト。

僕はそんな光景を見ながら、その日の朝、ぼんやりと体験した夢をなんとなく思い出していたんだ。

様々なところから集められたわずかな血液の集合体。

それが深い濃度で混ざり合って、電球を点す。

そんな希望的メタファが深層意識の中で抽象的に具現化され、僕にそんな夢を見せたのかもしれない。

まぁ都合良く解釈してるんだろうけどね。

いいじゃない。なんか繋がったんだよ、本当に。

ともあれ。

僕の理想をはるかに超える盛り上がりで、あの日は平日の記録的な集客数だったそうです。

もちろん興行的にダダすべりしなくて良かったという安堵はありますが、なにより「本当に楽しかった」という声がたくさん聞けて、ホっとしてます。

10周年を無事に迎えることができたお礼に、ジャグブランキンが多くの人に感謝を捧げるのを目的にしていましたが、

終わってみれば、さらなる感謝が見上げるほどに、今もこうして高くそびえ立っています。

【Novem】のユウタくん、ユウジくん。

【HONEBOEN】のエミリー、川口さん。

【DA.RASS BATTERY】のマコツ、ナカソン、ヒロキくん、春里さん。

【たいへんにんげん】のチャーリーくん、遠藤さん、キエちゃん。

【赤い月】のチマちゃん、斎木くん、瀬尾くん、バイソンJr.くん。

【Yellow Studs】の太一くん、良平くん、植田くん、奥平くん、田中くん、スタッフのみなさん。

【KU:グー】のキドさん、クロちゃん。

【EASY GOINGS】のらぁめんさん、スタッフのみなさん。

もちろん、トッティも、家族も、見えないところで手助けをしてくれた多くの仲間たちも。

そして当日、来られた人も、来られなかった人も。

みなさん、本当に本当にありがとうございました。

なんだかやたらと長くなってしまいましたが、これも無計画と思い付きの産物です。

さぁ。11年目のジャグブランキン。

次の10年に向けて、さらに精進して参りたいと思います。

USU

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